社外への社長紹介はどう言う?来客に向けた敬語を選ぶ
社外の人に自社の社長を紹介するとき、敬語はどう使う?
来客に向けて社長を自分側として紹介し、社員だけの会とは使い分けます。
社外のお客様を招いた会で、司会者として自社の社長を紹介することになったら、どの敬語を選べばよいのでしょうか。
普段なら「社長のお話を伺います」と話すのに、来客の前では「社長からご挨拶を申し上げます」と聞き、話す人は社長なのになぜ「申し上げる」なのかと迷うかもしれません。
鍵になるのは、肩書の高さだけで言葉を決めず、誰に向けて誰の行動を伝えるかを考えることです。
同じ社長でも、社員だけの会では話を聞く側から立て、取引先を招く会では会社側の一員としてお客様に向けて紹介します。
この記事では文化庁と国立国語研究所の解説をもとに、司会の言い方、電話で上司の不在を伝える言葉、判断が揺れる場面を具体的に見ていきます。
それぞれの言葉が誰への配慮を表すのかが分かれば、暗記した一文に頼らず、その場に合う表現を選びやすくなります。
社外の人に社長の挨拶を紹介するときの敬語
| 場面 | 司会の例 | 立てる相手 |
|---|---|---|
| 社員だけの会 | 社長からご挨拶をいただきます | 社長 |
| 取引先を招いた会 | 社長の佐藤からご挨拶申し上げます | 来客 |
| 来客に役割を示す | 当社社長がご挨拶いたします | 来客 |
社外の人を招いた会で司会をする場合、社長の行動を伝える相手は、あいさつを聞く来客です。
そのため、自社の一員である司会者は、社長を自分側の人として扱い、聞き手に対する丁寧さを表します。
国立国語研究所は、来客を招いた会合での例として「社長の佐藤からごあいさつを申し上げます」や「当社社長がごあいさついたします」を挙げています。
どちらも話す人は社長ですが、司会者が会社を代表する立場で来客に案内するため、会社側の行為として述べられます。
一方、社員だけの会合では、司会者や参加者が社長の話を聞く立場です。
文化庁は社員だけの忘年会なら「社長からごあいさつをいただきます」と、社長を立てる言い方を示しています。
社外の人が多い会なら「社長からごあいさつを申し上げます」と、話の向かう先である聞き手を立てる言い方を示しています。
同じ「あいさつ」でも、社長から受けるものとして述べるか、お客様へ届けるものとして述べるかで、文の組み立てが変わるのです。
会の開始前に確認したいのは、会場が自社の建物かどうかよりも、誰を招き、司会者がどの立場で案内するかです。
社員だけの朝礼なら「社長からお話を伺います」と言えば、話を受ける社員の立場が明確になります。
取引先を招いた説明会なら「続きまして、社長の佐藤よりご挨拶申し上げます」とすると、司会者が会社側から来客へ案内する形になります。
名前を伝える必要がなければ「続きまして、当社社長がご挨拶いたします」としても分かりやすいでしょう。
反対に、社外の来客に向けた紹介で「佐藤社長がご挨拶なさいます」とすると、自社側の社長を来客に対して高める形になります。
社長への敬意をなくしたいのではなく、お客様を迎える場では会社全体が同じ側に立つと考えるのがポイントです。
「社長からご挨拶をいただきます」は、社内だけの会では自然ですが、来客に向けて会社を代表して紹介する場合には、社長を立てる向きが前面に出ます。
そのようなときは「申し上げます」や「いたします」に直すと、来客への案内として整理できます。
ただし、会の参加者が混在しているからといって、社外の人が一人でもいれば常に決まった形にしなければならない、と単純に決める必要はありません。
会の主旨や誰に向けた司会かを考え、運営担当者と台本を確認しておくと安心です。
会場にいる社長本人へ直接「社長、お願いいたします」と呼び掛ける場面と、来客へ社長を紹介する場面も分けて考えましょう。
前者は本人への呼び掛けであり、後者は社長について別の人へ説明する言葉です。
同じ人物でも文の相手が違うため、紹介で名前をどう示すかという判断を、そのまま本人への呼び掛けに当てはめる必要はありません。
たとえば、司会原稿に社長の名前と役職を初めて載せるなら「弊社代表取締役社長の佐藤より、ご挨拶申し上げます」と書けば、肩書と人物をまとめて紹介できます。
長い肩書を読み上げにくいときは、正式な紹介が必要な場かどうかを運営担当者に確かめてから短くしましょう。
また、社長がすでに紹介された後で再び登壇する場合は「続いて、社長の佐藤からお話しいたします」とすれば、同じ肩書を繰り返し過ぎずに済みます。
社外の講師を紹介するときは、その講師は自社側ではありません。
「本日の講師、山田様にお話しいただきます」とすると、話を受ける側から講師への敬意を表せます。
同じ司会台本でも、自社社長と招いた講師のどちらが話すのかで敬語の向きを切り替えます。
社長が来客へ挨拶することを案内するときと、来客自身を壇上へ招くときは、誰に対する言葉かが違うからです。
紹介の直前に名前や肩書、登壇順を本人や担当者に確認すると、表現だけでなく案内の正確さも保てます。
取引先への電話で自社の上司をどう伝える?
| 状況 | 伝え方の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 上司が不在 | 部長の田中は席を外しております | 誰の不在か |
| 戻る時刻が判明 | 午後三時に戻る予定です | 予定を確認できるか |
| 伝言を預かる | 田中に申し伝えます | 用件と連絡先 |
社外の取引先に上司のことを伝える電話でも、基本になるのは、話している相手から見て誰が自分側かという視点です。
たとえば取引先から田中部長宛てに電話が入り、席を外している場合は「田中はただいま席を外しております」と伝えられます。
名前だけで言うことに抵抗があるなら「部長の田中はただいま席を外しております」と、役職を先に置く方法があります。
文化庁は、上司を取引先に話題として伝えるときの「田中」や「部長の田中」を、自分側として扱う表現として説明しています。
名前の後ろに役職を付ける「田中部長」は、同資料では自分側として扱う呼び方にはならないとされています。
役職を伝えること自体が問題なのではなく、どの位置に置き、何を表しているかが違います。
「部長の田中」は田中の職階を説明し、「田中部長」は通常、田中を立てる呼び方として働きます。
社外の相手へ上司を紹介するときも「弊社営業部長の田中です」のように、所属と役割を先に伝えると人物を特定しやすくなります。
電話で相手が既に担当者を知っていれば「田中は会議中です」で足りる場合もあります。
同じ姓の社員がいる場合は、部署名や名前を補って取り違えを防ぎましょう。
名前を出さずに済む場面なら、文化庁が示す「弊社の部長」という言い方も選べます。
ただし、相手が誰を指すか分からないときには、丁寧さだけでなく情報の分かりやすさも必要です。
在席の有無を伝えた後は「戻りましたら、田中に申し伝えます」と、次にどうするかを明らかにすると相手が判断しやすくなります。
戻り時刻が分かる場合は「午後三時に戻る予定です」のように伝え、分からない場合は推測で約束しないことが大切です。
取引先からの伝言があれば、用件と連絡先を必要な範囲で確認し、社内の引き継ぎ方法に沿って伝えます。
一方、上司の不在を「田中部長はいらっしゃいません」と言うと、社外の相手に対して自社の上司を尊敬語で表す形になります。
ここでは「田中はおりません」や「部長の田中は席を外しております」のように言うと、来客への丁寧さを保ちながら自社側の状況を伝えられます。
「おりません」は相手をぞんざいに扱う言葉ではなく、話し手側の状態を丁重に説明する言い方です。
上司の予定を伝えるときも、行き先によって言葉を選びます。
文化庁は、取引先の社員に自社部長の海外出張を話す例で「海外に参ります」を挙げ、場所である海外を「伺う」の向かう先として立てる言い方は適切でないと説明しています。
「伺う」をいつでも丁寧な「行く」の代わりにするのではなく、誰のところへ行くのかを確かめることが大切です。
上司が取引先を訪問する連絡なら「田中が御社へ伺います」と相手への訪問を示せますが、旅行先や地名だけを相手のように扱う必要はありません。
折り返しの希望を受けた場合には「戻り次第、田中からお電話いたします」と伝えられますが、本人が対応できるか確認できない場合は「申し伝えます」として確約を避けます。
相手が急いでいると分かれば「別の担当者で承れることはございますか」と尋ねる方法もあります。
ただし、担当者の変更ができるかは用件や職場のルールによるため、引き継ぎ先を確認してから案内しましょう。
自社の田中から取引先に先ほど連絡したことを伝えるなら「先ほど田中からご連絡いたしました」と言えます。
ここでも連絡した人を取引先に向けて立てるのではなく、自社側の行動を丁寧に述べています。
相手がかけ直す予定なら、電話番号を繰り返す前に必要性を確認し、個人情報を必要以上に口にしない配慮もできます。
電話を終える前に「田中が戻りましたら、いただいた件を申し伝えます」と対応を復唱すれば、双方の理解がずれていないか確認できます。
相手の名前が聞き取れなかったときは、曖昧なまま取り次がず「恐れ入りますが、もう一度お名前を伺ってもよろしいでしょうか」と尋ねましょう。
社内外が混ざる場面は誰への言葉かで考える
| 相手と場面 | 表現の例 | 判断の視点 |
|---|---|---|
| 社員だけの会 | 社長のお話を伺います | 社長の話を受ける |
| 取引先を招いた会 | 社長からご挨拶申し上げます | 会社側から来客へ |
| 取引先からの電話 | 部長の田中は不在です | 社内の人を話題にする |
社内と社外を分ける考え方は便利ですが、実際の会話では参加者の関係や、その場で誰に話しているかによって判断が変わります。
まず、社内だけの会では社長の話を受ける社員として「社長のお話を伺います」と言えます。
取引先を招いて会社側から司会する会では「社長の佐藤からご挨拶申し上げます」として来客に向けます。
取引先の担当者に、自社部長の不在を説明するときは「部長の田中は席を外しております」と伝えます。
この三つはすべて自社の上司が登場しますが、会話の相手と自分の立場が違うため、同じ敬語を当てはめません。
社内の複数の上司がいる場面では、さらに一つの考えだけに固定できないことがあります。
文化庁は、係長が課長とともに部長に話す例で、課長を自分側として「課長はそのように申しておりました」とする考え方を示しています。
同時に、課長を立てることで部長も立てると捉え、「おっしゃっていました」とする考え方も紹介しています。
つまり、同じ会社の中でも、所属や上下関係、その場で求められる配慮を見て言葉を選ぶ余地があります。
普段の職場で上司から表現について指示がある場合は、その事情を確認して会話を整えるとよいでしょう。
別の例として、学校で保護者から電話を受け、同僚の先生が不在だと伝える場面があります。
文化庁は、学校側を自分側と考えれば姓だけで伝える形を示しつつ、保護者に対しては「田中先生」を支持する人が多いという調査上の傾向も紹介しています。
生徒を基準に教師であることを優先する見方があり、職名を示す「田中教諭」という中立的な言い方もあると説明しています。
これは、組織の外の人には必ず一つの呼び方しか許されないと考えると、実際の言語感覚を見落とす例です。
会社の電話で自社の上司を伝える基本を押さえながら、相手との関係や職場の慣行も無視しないようにしましょう。
また「ご挨拶をいただきます」と「ご挨拶を申し上げます」は、どちらか一方が常に正しいわけではありません。
前者は社長のあいさつを自分側が受ける場面に、後者は会社側のあいさつを来客へ届ける場面に合います。
迷ったら文章の主語と行為の向かう先を補い「誰が、誰に、何をするのか」を一度書き出してみてください。
司会台本なら「自社社長が、招いたお客様に、挨拶をする」と整理すれば、来客に向けた「申し上げます」が選びやすくなります。
社員向けなら「社員が、社長から、話を聞く」と考えることで「伺います」が自然になります。
電話なら「取引先に、自社部長の不在を伝える」と捉え、本人への呼び掛けと区別できます。
言い換えた後は、実際に声に出して、相手が誰のことか分かるか、伝えるべき予定や用件が抜けていないかを確かめましょう。
相手を敬う気持ちに加え、正しい相手に必要な情報が届く文章を選ぶことが、社外の上司紹介を円滑にします。
取引先と自社の上司が同席していても、司会者が来客に対して社長を紹介する部分では、社長を会社側の人として説明します。
その直後に社長本人へ登壇を促すなら「それでは社長、お願いいたします」と呼び掛け、相手が切り替わったことを言葉で示せます。
逆に、取引先の方へ自社の部長を紹介する際に「こちらが田中部長です」と普段の社内の呼称をそのまま使うと、聞き手への紹介として敬意の向きがずれます。
「こちらは営業部長の田中です」と職階を説明する形に整えれば、肩書を知らせながら会社側の人として紹介できます。
一方、自社の社員に取引先の担当者を紹介するときは、その担当者は自社側ではありません。
「こちらは取引先の山田様です」と、紹介される方への敬意を示す表現にします。
話す場所が同じ会議室でも、紹介される人と聞き手が入れ替われば言い方も変わります。
電話や対面の表現をメールに移す場合も、宛先が取引先か社内かを確認し、誰の行動を説明する文なのかを確かめましょう。
定型文を使うときは名前と役職だけを差し替えるのでなく、その文が社内向けに作られたものか、来客向けに作られたものかも見直すと安心です。